この探讨で特に重視した措施は次のとおりである。 「~てみる」の形式のもつ文法的な意味を,日语,基本的な意味から派生的な意味にいたるまでこまかく検討した。そしてそれらの意味の間の関係を明らかにしようとした。 この形式が実現する意味は,動詞の語い的意味と深い関連をもっているので,そこにあらわれた動詞の語い的分類をできるだけくわしくした。 意味が決まる要因として,単語のレベルでは動詞の性格が大きく効いているが,その他に連語のレベル,文のレベル,コンテクストのレベルのそれぞれで,意味の決定にあずかる要因が働く。これらのことを常に考慮に入れて意味の略论をした。 例文は,実際に使われているものの中からとることとして,あとにあげる著作の中から選び出した。資料としては,映画のシナリオと,小学生用の国語の教科書を使った。 シナリオ 1.橋本 忍「白い巨塔」1966 2.橋本 忍「白と黒」1963 3.須崎勝弥「キスカ」1965 4.新藤兼人「傷だらけの山河」1964(「傷」と略す) 5.黒沢 明「天国と地嶽」1963(「天」と略す) 6.佐治 乾・河辺和夫「非行少年」1964(「非」と略す) 7.井手俊郎「女の中にいる他人」1966(「女」と略す) 8・安部公房「砂の女」1964 すべてダゲィット社発行の「年鑑代表シナリオ集」による。 教科書 「小学新国語一年上」1970 「小学新国語一年下」1968 「小学新国語二年上」1970 「小学新国語二年下」1968 「小学新国語三年上」1967 「小学新国語三年下」1968 「小学新国語四年上」1968 「小学新国語四年下」1965 「小学新国語五年上」1968 「小学新国語五年下」1965 「小学新国語六年上」1968 「小学新国語六年下」1965 すべて石森延男著/編,光村図書出版株式会社のものである。 本文中の例文では, 次のような措施で出典を示した。 シナリオでは,タイトルと,場面ごとにつけられた番号によって示した。 教科書では,学年,上下の別・ページの順に示した。このページは問題とする形式ののっているページではなく,その例文のはじまるページを示す。だから,例えば,15ページに「してみる」という箇所があっても,その例文のはじまりが 14ページにあるなら 14とした。以上のようなわけで,「~てみる」の文法的意味を深く探讨することは,「補助動詞」とは何かについて考察するとともに,外国人に効果的に日本語を教えなければならない場合の資料を提供することにもなるので,日语论文,これを探讨してみたしだいである。 |