「のだ」と「わけだ」
「わけだ」は、先行文脈からの、論理的必然性のある帰結·結果を示す。 例(1)のようである。 1.3時に着いて4時には出た。たった1時間しかなかったわけだ。 しかし、「のだ」にはそういった性質はない。例を略论する。 2.佐藤さんが来たのは4時、田中さんが帰ったのは5時です。二人は1時 間しか話ができなかった{わけです∕んです}。 3.大雨だと中止か。ということは、小雨だと決行する{わけだ∕んだ}。 両方とも使える場合は、「わけだ」の文では、それぞれ、論理的必然性の ある帰結や結果である「二人は1時間しか話ができなかった」「小雨だと決 行する」ということが示される。が、「のだ」を用いた文では、ただ話し手 がその事情を提示したり、把握したりすることが示される。 以下の例(4)の「わけなのだ」というように、「わけだ」と「のだ」が 接続する場合は、「わけだ」が論理的必然性を表し、「のだ」は、文の内容を 聞き手に認識させようという態度を表す。つまり、「電車とバスで通勤する と1時間45分かかりますが、車だと1時間です」ということから、論理的 必然性のある「免許をとることに決めた」ということが「わけだ」によって 示されており、「のだ」は「~わけだ」全体を聞き手に認識させようといっ た話し手の態度を示していると考えられる。 4.電車とバスで通勤すると1時間45分かかりますが、車だと1時間です。 それで、免許をとることに決めたわけなんです。 「のだ」と「わけだ」は類似した文脈で用いられることも多いが、「の だ」だけが用いられ、「わけだ」には置き換えられない場合も多い。「のだ」 は、言語化されていない状況について、その事情を提示したり把握したりす る場合にも用いられるが、「わけだ」は用いられにくい。例えば、 5.[咳をして]風邪をひいてる{んです∕×わけです}。 また、「のだ」は、先行文脈の内容について、その事情を提示する場合に も用いられるが、「わけだ」は用いられにくい。例(6)のようである。 6.今日は早退します。熱がある{んです∕×わけです}。 先行文脈の内容について、事情を把握する場合なら、「わけだ」も用いる ことができる。 7.「明日から3日間留守にします」 「あ、旅行に行く{んです∕わけです}ね」 「のだ」には、先行文脈や状況と関係づけずに、すでに定まっている事態 を提示したり把握したりする用法があるが、「わけだ」は用いられない。例 えば、 8.実は、私は、もうすぐ結婚する{んです∕×わけです}
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