吉川 武時
使役の受身形の問題から「読ます yomasu」などの -asu語尾の問題、 自他の対応の問題、さらに可能形が登場して問題がますます複雑になった。 使役形 使役形の作り方を確認しておこう。 五段動詞 -u を取って -aseru を付ける。yom-u → yom-aseru 一段動詞 -ru を取って -saseru を付ける。 tabe-ru → tabe-saseru 不規則動詞 来る(くる) → 来させる(こさせる) する → させる こうして出来上がった受身形は一つの一段動詞として各形に変化する。「読ませる、読ませない、読ませた、読ませれば、読ませよう」などである。 使役の受身形 その使役形から受身形を作る規則に従って使役の受身形を作ると、次のようになる。
読ませる → 読ませられる 食べさせる → 食べさせられる 使役の受身形・長形と短形 ところが、「読ませられる」と言う代わりに「読まされる」と言うことがある。また「待つ」では、使役形は「待たせる」、その受身形は「待たせられる」となるが、その代わりに「待たされる」と言うことが多い。この「読まされる」「待たされる」という形をどう考えたらよいだろうか。使役形、受身形と順を追って作られた形は長形、ここに挙げた形は短形である。この短形は、長形の中の er を取り去ったものである。
使役の受身形・長形 使役の受身形・短形 yomaserareru → yomasareru mataserareru → matasareru なお、長形・短形が問題になるのは五段動詞の場合だけである。 ここまでは『日本語文法入門』に書いた通りである。 また、すべての五段動詞に長形・短形があるわけではない。「話す」「押す」など「す」で終わる動詞には短形はないようである。
使役の受身形・長形 使役の受身形・短形 hanasaserareru → *hanasasareru osaserareru → *osasareru -ASU語尾の登場 ところで、研修会などで「読まされる」「待たされる」は「読ます、待たす」から出来たものではないか、と主張する受講生にたびたび出会った。
yomasu → yomas-areru matasu → matas-sareru この「読ます」は「読む」の -u を取って -asu を付けたものである。「読ます」などは辞書に載っていない。辞書に載っていない形を基にしてある形を作るのはおかしい、と考えた。 自他の対応のパターン (7)U-ASU との関係 自他の対応のパターンの一つに U-ASU というのがある。自他の対応のパターンについてはこちら と『日本語文法入門』を参照。
自動詞 他動詞 her-u her-asu ugok-u ugok-asu kawak-u kawak-asu wak-u wak-asu |