『危ないです』?
何か違和感があるアナウンス?
ふと思ったのですが…
電車が来るときに、「まもなく電車が到着します。危ないですから、白線の…」というアナウンスが流れませんか。 私の住んでいる地域でもこうアナウンスされます。
このアナウンスの「ですから」に何か違和感を感じました。「危ないですから」よりも「危険ですので」の方がしっくり来る気がします。
これは、日本語の乱れなのでしょうか?
それとも、どこかの地方の言い回しなのでしょうか? もし、どこかの地方の言い回しであるのなら、どこの地方の言い回しなのでしょうか (確か、関西では「危険ですので」とアナウンスされていたが気するので、どこかの地方の言い回しかな、と思ったのですが、どうなのでしょうか。)?
よろしくお願いします。
回答: その違和感は、ある程度の年齢以上の日本人なら、持って然るべきだと思います。 その原因は、「ですから」というより、「危ないです」のほうにあります。
形容詞は、本来「イ」の形で終わるのが終止形です。 「そこは、あぶない」が言い切りの形で、名詞ではないので、「だ」「です」はつきません。 しかしそれでは丁寧さが足りない、と感じた場合にどうすればよいか・・・ 本来の日本語では「あぶのうございます」となります。 「おいしい」→「おいしう(音としては、しゅう)ございます」と同じです。 ところが、この正しい丁寧語が「古くさく」なって、一般的には使われなくなってしまったため、形容詞の丁寧形がなくなってしまいました。 そこで現代の日本人が考え出したのが「名詞・形容動詞+だ」の丁寧形の「名詞・形容動詞+です」を流用することでした。 これによって、形容詞の現代風な丁寧語「~い+です」が使われるようになったのです。 今でもこの形に違和感をおぼえる人は大勢います。こなれていない、稚拙で幼稚な感じがして当然です。 ~い+です「か」「ね」「よ」「よね」などの終助詞をつけることで、違和感はかなり緩和されるのですが、 「です」で言い切る形ですと、やはり「合わないものを取ってつけた」ぎくしゃくした感じは残るのです。 ・・とはいえ、学校教学・日本語教学(外国人のための)の場では、今や「~い+です」の形は誤りではなく、正式な形として認められているので、「まちがいだ」と言うわけにもいきません。 便利で使い勝手がよいのですから、違和感があっても認めざるを得ないのです。
ご質問の件も、まずは「危ないです」という言い方が「こなれていない日本語」であるためにアナウンスのようなフォーマルであるべき場で聞こえると、「しっくりしない」ことになります。 そして、さらに、一応「です」をつけて丁寧になっているところに、理由の「から」を接続したところがまた問題です。 これが、学校の生徒たちに向けた校内放送のようなアナウンスなら「危ないですから」でも、まだおかしくない(「幼稚でこなれていない感じでも許される」ので)気がしますが、一般の不特定多数の大人を相手にでは、フォーマルな度合いにも欠けます。 フォーマルな場で理由を述べるときには、「から」ではなく、その丁寧形としての「ので」を使うのが一般的な常識です。 しかし、「危ないですので」というのももともとの「危ないです」の形が、「とってつけた丁寧形」であるため、やはりしっくりくることはありません。おそらく駅(鉄道会社)でも考えはしたのでしょうが、「危ないです」の一種幼稚で生硬な感じに引きずられて「から」を選んだのだと思います。
「危ないから」(これは丁寧ではないが、正しい形です)ということを、正しくかつ丁寧に述べるなら「危のうございますので」となりますが、このような「格調高い」雰囲気はまた、別の意味で駅には合わないのでしょう。(いわゆる「浮いて」しまうという感じでしょうか)
そこで、イで終わる形容詞を使うのはやめ、同義の形容動詞「危険な」を使ったのは賢明な選択といえます。 こちらですと、「とってつけた丁寧形」ではなく、本来の活用形から自然に導かれる丁寧形が「危険です」なので、フォーマルな場面で理由を述べる「~ので」にもそのまま自然に接続することができるのです。
東京でも「危険ですので」を使っている駅はあり、これは地域差ではないと思います。
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