「子ども向け辞書の説明の特徴」
目次 序 章 探讨にあたって 第一節 課題設定の理由 第二節 課題解明の措施 第三節 テキストについて 第一章 ことばの選定と分類 第一節 基本語・基礎語彙について 第二節 ことばの分類 第二章 説明の略论 第一節 略论の措施 第二節 各語の説明の略论 第三節 考察 第三章 説明と例文・絵の関連 終章 まとめと今後の課題
序章 探讨にあたって 第一節 課題設定の理由 以前から、ことある毎に考えてきたことがある。「人に伝える」ということの難しさである。何かを伝えようとしても、うまく伝えることができないで、もどかしく思うことがあった。うまく伝えられないどころか、誤解まで生んでしまうこともあるのである。ある程度の語彙を有している今でさえ、時に経験する。そこで、この「うまく伝える」とはどのようなことなのかを考えたく思ったのである。 「うまく伝える」とはどのようなことなのかを考えるのに、まず「伝える」ということを考えた。ここで言う「伝える」とは、相手にわかってもらおうとすることである。自分の考えていること、思っていることをことばにして表す。ことばにして、こう考えているのだ、思っているのだと「説明する」のである。そこで、「どのように説明すればわかりやすいのか」を考えることにした。「わかりやすさ」という点について、論証するのは難しい。その点を省いたとしても、「説明する」ということについては、様々な表現措施が考えられる。では、どのような表現があるのだろうか。 また、難しいことばではなく、子どもにも簡単に理解できる「易しいことば」に注目したいとも考えていた。よって、子ども向けの文から「説明する」ということを考えようと思う。 「説明する」ことを考えるための資料を選ぶにあたっては、言葉を端的に説明していると考えられる辞書を取り上げることにした。辞書は、限られた長さで言葉を説明するため、様々な表現措施を使用していると考えられる。なかでも、できるだけ短い文で、易しい言葉によって説明されていると考えられる辞書をテキストとして取り上げ、その説明の表現特徴を明らかにしたいと思い、このように課題設定した。
第二節 課題解明の措施 一.課題解明のために適したテキストを選ぶ。 二.テキストの中から、略论することば(見出し語)を選定する。 三.選定したことばを略论する。 (略论に平行して、説明における特徴を見いだしつつ、その特徴ごとに整理し、分類していく。→第一章第二節) 四.略论したものをまとめ、整理し、体系化する。 五.例文・絵と、説明することの関連を考える。 六.まとめ
第三節 テキストについて 『三省堂 こども ことば絵じてん』 金田一春彦・監修 三省堂編修所・編 1996年12月10日 三省堂 をテキストとして選んだ。第一の理由としては、この辞書が子ども向け(対象年齢が6歳児まで)であるということと共に、他の同じ対象年齢の辞書には珍しく、ことばによる説明を重視している点に注目したのである。他の小学校入学以前の子どもを対象とする辞書は、多くがこの辞書のように「絵じてん」と名付けられ、その名の通り「絵」を中心として説明するものばかりであった。知りたいことばを、「絵」で示しているのみなのである。その説明にことばは、ほとんど使用されない。使用されていたとしても、それはことば(見出し語)の意味そのものの説明ではなく、そのことば(見出し語)を使った文例を示すのみであった。だからといって、対象を小学生以上にすると、書かれている説明が一般の大人向けとほとんど変わらないものまで出てきてしまい、この探讨で取り上げたいものとはかけ離れてしまう。そこで、この『三省堂 こども ことば絵じてん』をテキストとすることにしたのである。 |