「象は鼻が長い」に代表されるいわゆる「~は~が~」構文がよく議論されるのは、西洋の言語に機械的に翻訳できないからだ。 「この文は、主語が2つあっておかしい」とか「だから、日本語は特殊だ」などと言う人がいるが、それは間違いである。その人だって「この文は主語が2つある」と言っているじゃないか。 「~は~が~」構文は、日本語の主要な文型の1つである。決して例外的な文型ではない。 科学というものは、万国共通の普遍的なもので、ある民族の特徴を持つものではない。コンピュータ言語も、英語の国で発達したものとはいえ、普遍的なものであろう。その一つとして「スタイルシート(stylesheet)」を取り上げてみよう。スタイルシートに h1{color:red} こう記すと、一番大きい見出しの文字の色が赤になる。この記述は 「h1は色が赤い」 と読めるではないか。 元来「~は~が~」構文で表されることがらは、民族の別によらない普遍的なものなのではないか。日本語ではそれを「は」と「が」で表現するが、西洋の言語(コンピュータ言語でなく自然言語)では、これを統一的に表す構文がなくなってしまった。 The elephant is nose is long. は非文(正しくない文)となったのである。 「象は鼻が長い」にあたる一番妥当な英文は The elephant has a long trunk. である。イタリア語では L' elefante ha un naso lungo. となる。 have (持っている) で訳している。 コンピュータ言語のスタイルシート風に表せば、 Zoo{Hana:Nagai} となろう。 「~は~が~」構文の文の種類とその分類
日本語教学の初歩のレベルの例文から形式的に「~は~が~」という構文を取るものを集めて分類すると、およそ次のようになる。 形式的と言っても「父は 太郎がもうすぐ帰って来ると言った。」のように主述関係が2組認められるようなものは除く。 BがAの部分 象は鼻が長い。うさぎは耳が長い。きりんは首が長い。 BがAの持ち物 花子は着ているものがはでだ。 BがAの生産物 花子はかいた絵が売れた。 BがAの側面 富士山は高さが 3776m だ。 その他 山田さんは奥さんが病気だ。(親族関係) 述語「~」がガ格の対象[B]を取るもの 欲求の対象 私は新しいカメラがほしい。私は水が飲みたい。 すき・きらいの対象 私はねこがすきだ。花子は犬がきらいだ。 可能の対象 花子はピアノがひける。花子は英語が話せる。 その他 私は犬がこわい。(「こわい」対象) 上手・下手、得意・不得意の表現 上手・下手の表現 花子は歌が上手だ。花子は絵が下手だ。 得意・不得意の表現 花子は英語が得意だ。花子は水泳が不得意だ。 Aが主題化変形されたもの ヲ格の主題化 その仕事は私がします。 時の主題化 今日は雨が降っている。きのうは雪が降っていた。 所有の表現 [所有者](に)は [所有物]が ある 私(に)はお金がある。 経験の表現 ~は ……た ことが ある 私は北海道に行ったことがある。 |