I remember the party of the students to which I was invited. 池上嘉彦 1991年2月25日~26日 NHKテレビ「現代ジャーナル 日本語」より ということだが、「犬が走っているのを見る」を例に取って考えてみよう。これは「こと的」な文である。知覚動詞「見る」ではこの例のように「の」を使う。「こと的」な文であるが、「*犬が走っていることを見る」とは言わない。これに対して「走っている犬を見る」と言うのが「もの的」な文である。これを英独仏伊中芬(フィンランド語)について調べてみよう。
言 語 こと的 もの的 関係代名詞 分詞(連体形) 日 犬が走っているのを見る。 走っている犬を見る。 英 I see a dog running. I see a dog which is running. I see a running dog. 独 Ich sehe einen Hund laufen. Ich sehe einen Hund, das läuft. Ich sehe einen laufende Hund. 仏 Je vois un chien qui court. 伊 Vedo un cane che corre. 中 我 看見 一条 狗 在足包。 我 看見 一条 在足包 的 狗。 芬 Näen koiran juoksevan. Näen koiran, joka juoksee. Näen juokevan koiran. 独仏伊芬では、強いて表現したいとき以外は区別しない。 日 走るのを見る。 英 I see a dog run. to なし不定詞を用いるという有名な規則。 中 表の例文から「在」を除くと「走る」になる。 関係代名詞があるのは英独仏伊芬。 分詞の欄の日本語「走っている」は連体形。 中国語の「…的」を一応 分詞の欄に入れた。 仏伊にも分詞はあるが、この場合の表現には使われない。 関係代名詞による修飾は、被修飾語の後から行われる。つまり、被修飾語+関係代名詞となる。 分詞による修飾は、修飾語の前から行われる。つまり、分詞+被修飾語となる。 フィンランド語について Näen koiran juoksevan について Näen「見る」の一人称現在形。 koiran「犬」の生格。分詞の表す動作の主体は生格で表される。 juoksevan「走る」の現在分詞の対格。 Näen koiran, joka juoksee について koiran「犬」の対格。単数では生格と対格は同形。 joka 関係代名詞・主格。 juoksee「走る」の三人称現在形。 Näen juoksevan koiran について juoksevan「走る」の現在分詞の対格。 koiran「犬」の対格。分詞の格は修飾する名詞の格に一致させる。 日本語と中国語には2通りの言い方がある。 日本語では左の言い方が一般的である。「犬が走っていることを見る」とは言わない。「こと的」と言いながら、この言い方はない。 中国語では左の言い方が一般的だそうだ。これは兼語式と言って中国語によくある構文だ。 英独芬では3通りの言い方がある。 英語については一番左側の表現が一般的だろう。 ドイツ語についてはどれもよく使いそうだ。 sehen の文では一番左側の表現が一般的だろう。これは 「四格(Akkusativ)主語と不定法」という構文である。「四格が主語とはなんだ?」といぶかしがる人もいる。中国語の兼語式に似ている。しかし、一般には分詞(現在分詞に限らず過去分詞も)を使った一番右側の表現も多い。冠形詞と言われる。これがドイツ語の一つの特徴だ。 フィンランド語についてはどれもよく使いそうだ。 仏伊では1通りの言い方しかない。 |