吉川 武時
2003年11月1日(土)杏林学院今泉先生主催の文法探讨会で形式名詞について発表した。以下はそのときのレジュメである。また、探讨会で問題になった主な点を最後に記す。これを見ただけで分からない方は 『形式名詞がこれでわかる』を参考にしていただきたいと思う。 形式名詞 実質的な意味を失なって形式的に名詞としての役割を果たすだけになったもの。ただし、他のことばと組合わさることによって、きわめて重要な文法的機能を果たす。 複合辞 いくつかのことばが集まって一定の意味を表すようになったもの。 複合述語 述語に用いられた複合辞。一つの長い語尾と考えられる。
実質名詞を使った複合述語の例 もの、こと、よう、ところ、わけ、はず、つもり 実質名詞と紛らわしい場合 ものだ 世の中にはいろんな人がいるものだなあ。 ところだ 今みんなでご飯を食べるところです。 ことがある
ことにする・ことになる
「ことに/ように」と「する/なる」の組み合せで次の4通りの言い方ができる。 前に来ることば(動詞、形容詞)を過去形にすると次のようになる。 わけだ 論理の流れに則った発話であることを表す。X台風が近づいている Y波が荒い Z船が出せない (原因) (結果) 事柄の客観的な流れと話し手の認識の流れを分けよ。 X…Y…Z は事柄の客観的な(時間の)流れ 矢印は話し手の認識の流れ。認識の出発点をYとする。 Y→Z Y波が荒い。Z船が出せないわけだ。 《結果》に「わけだ」が付く。 X←Y Y波が荒い。X台風が近づいているわけだ。《原因》に「わけだ」が付く。 X⊂Y 台風が近づいている。Yどうりで波が荒いわけだ。《納得》 別の視点からの捉え直しであることを表す。 波がずいぶん荒いですね。海水浴シーズンも終わりというわけですか。 論理を踏まえた発話であることをほのめかす。 台風が近づいているわけだから、つりは無理だろう。 はずだ 予定・道理・当然の意を含んだ確信の強い推量を表す。1時に大阪を出たから、4時には東京に着くはずだ。 「ある事実を知り、~と了解できた」という状況でも使われる。 どうりで寒いはずだ。外は雪が降っている。 話し手自身の意志的な動作には用いられない。 * 私はたばこをやめるはずだ。 私はたばこがやめられるはずだ。 聞き手や他者に判断を求める疑問文にはならない。 * 5時には着くはずですか。 ? 5時には着くはずなんですか。 「はず」に関する非対称性 はずだ はずではない
4時には着くはずだ。 はずがある はずがない
3時には着くはずがない。 つもりだ 意志表現 意志動詞の現在形 1-1 行くつもりだ 2 行くつもりで 無意志表現 意志動詞の過去形 |