目 次 はじめに 第1章 歴史的なつながり 第2章 中日色彩詞「赤」「白」の艺术比較 第3章 中日色彩詞「赤」と「白」の用法比較 結び はじめに 筆者はある学生から色彩に関して以下のような質問を受けたことがある。中国には「朱夏」 色はあまりにも身近すぎる存在のため、普段はあまり意識することはない。だが、色は私た ― 63 ― 中どこでも同じである。また、結婚式のとき、中国の方は赤(朱)が好きであり、日本人は白が好きである。その理由は何であろうか。また、中国と日本の国旗は両国とも赤色であるが、「五星紅旗」の紅と「日の丸」の赤の代表する意味は同じであろうか。その違いは艺术だけに限ったことではない。語彙の使い方や翻訳の面にも区別されている。例えば、 “白跑一趟 ”という中国語があるが、その中の “白”を日本語に訳すと「無駄」という意味になり、「無駄足を踏む」という意味となる。また、日本語の中の「赤の他人」もあるが、中国語に訳せば “毫无联系的人 ”となっている。つまり、「白」や「赤」を直接に日本語や中国語に訳すと、意味不明となってくるのである。 これらの問題を理解するために、本論の手順としては、まず第1に「朱夏」と「白秋」の意味を説明しながら中日歴史的なつながりを述べる。第2に、中日色彩詞「赤」と「白」の艺术的比較を行い、それぞれの共通点と相違点を明らかにしたい。第3に、それらの用法比較や翻訳から見る「赤」と「白」について検討し、直訳できる言葉と直訳できない言葉をいくつか紹介したい。これらの比較を通して、中国と日本との艺术比較を試みたい。 第1章 歴史的なつながり 五行思想(ごぎょうしそう)によると、東西南北、四つの方位をあらわす象徴的聖獣を四神という。東を「青竜」、南を「朱雀」、西を「白虎」、北を「玄武」で表す。青は青々と繁る木の色、赤は火の色、白は金属の光、黒は水が暗く低いところに集まるところからくる。これは、中国大陸を思い起こせば、解りやすい。東方は、太陽が昇る方向、南方は暑く、西方は白く輝く山々が有り、北方は冷たい地方とつながる。要するに、青龍は「春、東、青」を、朱雀は「夏、南、朱」を、白虎は「秋、西、白」を、玄武は「冬、北、黒」をあらわす世界観をもっていると言えよう。 また、四季の変化は五行の推移によって起こると考えられた。そこから、四季に対応する五行の色と四季を合わせて、青春、朱夏、白秋、玄冬といった言葉が生まれた。「朱夏」とは、その名の通り、夏を表している。「朱夏」という言葉はあまり知られていないが、春を表す「青春」を知らない人はいないであろう。秋を表す「白秋」は、日本では「北原白秋」という詩人の雅号で有名である。冬を表すのは「玄冬」であるが、「玄」とは「玄人」という音や「玄米」という使われ方からわかるように、「黒」を意味する。 |