吉川 武時
自他の対応は、原則として格助詞「が-を」の対応をするが、本稿では「が-を」以外の対応をするものについても述べる。また、フォーク型対応と言って、1つの自動詞に2つ(以上)の他動詞が対応するもの、この逆のものなどについても述べる。 自動詞・他動詞の対応、いわゆる自他の対応とは「開く akU:開ける akERU」のように、語根(ak-)を共通にし、接尾辞(-U、-ERU)によって自動詞・他動詞となる1組の動詞のことである。この接尾辞「-U、-ERU」は、自他の対応のパターンの1つである。こうした対応のタパーンは、以下に挙げるように 11 (その他を入れると 12)ある。対応する自動詞と他動詞は、一般に「戸が開く:戸を開ける」のように、「ガ格名詞+自動詞」「ヲ格名詞+他動詞」として用いられる。格助詞だけを示せば「が-を」であるので、自他の対応とは「が-を」の対応と言うことができる。しかし、数ある動詞の中には“自他の対応”と言っても、「が-を」以外の対応をするものがある。そこで、各対応のパターンについて、これらを調べてみる。 自動詞と他動詞の形の上の対応のルール (1)ふさがる ふさぐ husag-ARU husag-U (2)あがる あげる ag-ARU ag-ERU (3)あく あける ak-U ak-ERU (4)とれる とる tor-ERU tor-U (5)ぬれる ぬらす nur-ERU nur-ASU (6)たおれる たおす tao-RERU tao-SU (7)かわく かわかす kawak-U kawak-ASU (8)のびる のばす nob-IRU nob-ASU (9)おちる おとす ot-IRU ot-OSU (10)のこる のこす noko-RU noko-SU (11)のる のせる no-RU no-SERU (12)きえる けす k-IERU k-ESU 『日本語文法入門』(アルク)(p.72~74)。 この中で一番数が多いのは(2)、次いで(3)である。これをじっとながめていると、いろいろなことが見えてくるだろう。 (3)と(4)とでは自動詞と他動詞が逆になっている。 (5)以下は自動詞側(左)に -RU があり((7)を除く)、他動詞側(右)に -SU がある。 (5)(7)(8)では他動詞側が -ASU となっている。 (4)(5)の自動詞側の -ERU と(2)(3)の他動詞側の -ERU は歴史的に異なる音韻だったと予想される。同じ語形が一方は自動詞化、一方は他動詞化というのは考えにくい。 ※小生はこの方面に詳しくないので、これ以上のことは言えない。(1)ARU-U husagARU-husagU 次の例は、一般的な「が-を」の対応をする。 自動詞 例 他動詞 例 ふさがる 泥で穴がふさがる ふさぐ 栓で穴をふさぐ つながる 電極がつながる つなぐ 電極をつなぐ ささる 指にとげがささる さす 腕に針をさす 「くるまる:くるむ」
「くるまる:くるむ」も「が-を」の対応をするが、用法に差がある。 自動詞 例 他動詞 例 くるまる ? 野菜が紙にくるまる くるむ 野菜を紙にくるむ 「またがる:またぐ」 「またがる:またぐ」は次のようになる。 自動詞 例 他動詞 例 またがる どぶにまたがる またぐ どぶをまたぐ 上の例では「に-を」の対応をしているが、下の例のように「またぐ」が使えない場合もある。 ◎「フォーク型対応」について --「つながる:つなげる、つなぐ」を例に-- |