食べ物の味を評価する際、単に「おいしい、まずい」と言うよりは、オノマトペを用いて表した方がより生き生きした表現になる。また、料理の種類によって連想されるオノマトペが...
食べ物の味を評価する際、単に「おいしい、まずい」と言うよりは、オノマトペを用いて表した方がより生き生きした表現になる。また、料理の種類によって連想されるオノマトペが異なり、同じ料理であってもどのようなオノマトペを用いて表現するかによって違う感じになる。食感覚に関するオノマトペは「味覚、嗅覚、触覚、視覚、聴覚」の五感に関わって現れる。
本論文ではそのような側面に着目し、日本語と韓国語の「食」に関するオノマトペについて人間の基本感覚である「五感」に分けてそれぞれの特徴を明らかにし、さらに食感覚オノマトペの意味の派生の様相についても考察した。日本語と韓国語はオノマトペが豊富であっても、両言語におけるオノマトペの意味的な特徴や表現様相が同じように現れるわけではない。また、意味の派生様相においても基本的な感覚の意味から出発して多様な派生様相を見せていることが確認できるし、このような側面においても日本語と韓国語の類似点と相違点が存在することが分かった。
考察対象語彙は、食べ物の味を表す「味覚」、臭いを表す「嗅覚」、口の中で感じられる感触である「触覚」、食べる様子や調理様子と食べ物の状態や色彩を表す「視覚」、食べる際や調理の際に発生する音を表す「聴覚」に関するオノマトペである。考察に用いる用例資料は、日本語と韓国語のオノマトペに関する辞書およびコーパスやインターネット版新聞記事の用例を中心に収集した。オノマトペの特性上、多様な形態が見られるが、普遍的な特徴を導きだすため、制約的に使われるオノマトペはなるべく排除してオノマトペの関連辞書と資料で扱われている用例を優先的に用いた。
食感覚と直接関連している感覚、すなわち「味覚、嗅覚、触覚」を合わせて直接的食感覚と規定し、食感覚と間接的に繋がっている感覚である「視覚、聴覚」を間接的食感覚として扱った。各感覚における意味的特徴をまとめてみると、次のようである。
まず、「味覚」を表すオノマトペを、「基本味」に関する表現と「濃淡」に関する表現に分けた。「基本味」には、「甘味、塩味、酸味、苦味、辛味」が属するが、日本語のオノマトペは「辛味」にいくつか見られるだけで、他の味に関する表現はあまりない反面、韓国語はそれぞれの味におけるオノマトペが多く現れた。しかし、「濃厚感」と「清涼感」に分けられる「濃淡」に関するオノマトペについては、日本語でオノマトペとして表れるのが、韓国語は形容詞で表れる傾向が強かった。韓国語のオノマトペは感覚的なものまで含まれているため、日本語と韓国語の味覚オノマトペの設定範囲が異なっている側面もあるが、日本語のオノマトペは和語に属する場合が多いにもかかわらず、「基本味」に関するオノマトペがあまりないという興味深い結果が見られた。
日本語は「嗅覚」に関するオノマトペが限定的に現れる一方、韓国語は日本語に比べ様々な表現が現れているところが対照的であった。「よさ」、「悪さ」、「強さ」に分けて日本語と韓国語のオノマトペを収集した結果、韓国語は各々の意味に属する表現が多く現れたが、日本語は「よさ」を表すオノマトペはあまりなく、「悪さ」と「強さ」を表す意味としていくつかの表現が見られるのみであった。
「触覚」を表すオノマトペは、五つの感覚のうち、日本語と韓国語のオノマトペがもっとも豊富に現れる感覚でありながら、いわゆる「食感」がよいか悪いかを評価する際、もっとも直接的に影响する感覚である。「かたさ」、「やわらかさ」、「乾燥」、「湿り気」、「なめらかさ」、「粘り気」、「弾力」、「熱さ」、「冷たさ」に分けて調べた結果、「乾燥」と「やわらかさ」は、韓国語の方が多く現れるが、「湿り気」に関するオノマトペは日本語の方により多く現れることが確認できた。
「視覚」を表すオノマトペについて、「動き」、「調理」、「状態」に分けてそれぞれの下位分類を立てた。「動き」は、「食べる様子」、「飲む様子」、「噛む様子」に分けられたが、全体的に日本語より韓国語の方により様々なオノマトペが収集された。「調理」に関しては、「煮る様子」、「焼く様子」、「切る様子」、「かける様子」に分けられたが、日本語と韓国語が同程度の比率で表れた。「状態」は「形態」と「色彩」に分けることができたが、「形態」は目を通して推測される食べ物の状態を表すことで、「触覚」を表すオノマトペと重なる部分が多かった。また、もともと日本語より韓国語の方が「色彩」に関する表現が豊かであるが、食感覚に限定すると僅かにしか現れなかった。「視覚」を表すオノマトペは、日韓両国における食べ物の調理法と食べ方の違いに影響を受けて、異なる表現で現れる場合が多かったが、言語と文化が繋がっているところから考えてみるとかなりおもしろい結果である。
「聴覚」を表すオノマトペは、擬声語である「食事音」と擬音語である「調理音」に分けることができた。「食事音」は食べ物を食べる際に発生する音として、主に「食べる音」と「噛む音」に分けられた。また、「調理音」は、料理をする際に発生する音として「煮る音」、「焼く音」、「切る音」などがあった。それぞれの分類に相當するオノマトペは日本語より韓国語の方でより多様なオノマトペが現れたが、実際に聞こえる音を言葉で表現するという「聴覚」の特性から考えると、使用者別、もしくは、使用状況別によって多様な形態で現れたと言えるであろう。オノマトペは、同じオノマトペを繰り返して用いて強調効果を表すことが可能であるが、そのような反復表現は、特に「聴覚」で目立つ現象であった。
また、日・韓両言語における食感覚を表すオノマトペの使用様相は、単一感覚として使用されるオノマトペがあるとすると、二つ以上の感覚に渡って表れるオノマトペも相當に存在する。二つ以上の感覚が複合的に表れる様相を「複合感覚」と規定し、それに関して「味覚/嗅覚」、「味覚/触覚」、「味覚/視覚」、「触覚/視覚」、「触覚/聴覚」、「視覚/聴覚」、「触覚/視覚/聴覚」の六つに分けて考察した。
単語は、いわゆる「多義性」を持っているが、オノマトペも意味の派生が表れることに注目し、食感覚を表すオノマトペの意味から派生してほかの意味に拡張される場合を調べた。各感覚別に分けて特徴をまとめてみると、一次的な基本感覚から二次的な感覚で、あるいは、具体的な意味から抽象的な意味に移動する傾向が見られた。例えば、人の性格を表す意味に派生されたり、物の特性を表す意味に派生されたりと、多様な様相が観察された。日本語は清音と濁音の対立で肯定と否定の意味の差が成り立っており、韓国語は陽性母音と陰性母音の対立で肯定と否定の違いが成り立っているが、それらが派生様相まで影響を及ぼしている場合もあることが確認できた。また、感覚の側面としては似ている意味で使用される日本語と韓国語のオノマトペが、派生様相の側面では異なる意味で表れるというおもしろい結果も見られた。
本論文の結果として、食感覚に関するオノマトペは、日本語より韓国語の方がより多様に現れるというのは注目すべき結果である。特に、和語をもとにする日本語のオノマトペのうち、「味覚」と「嗅覚」に関する表現がごく限られている点は意外な結果として興味深い。
以上の考察の結果は、言語的な側面だけでは不十分であり、文化的な側面とも比べてみる必要があることを示唆している。両国における食べ物の種類と調理措施および食べ物の発達から始まる表現の違いが、オノマトペの使用様相とも関係があると判断できるため、今後はこのような部分を念頭において探讨していきたい。また、韓国語の方は日本語に比べて本格的なオノマトペ辞書が手に入らなかったのが残念なところであるが、これから食感覚の表現と関連する日韓オノマトペ辞書を作る作業にも挑戦してみたい。
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