本論文は、韓国人日本語学習者(ソウル方言話者と慶尙道方言話者)の日本語アクセントの学習効果を調べるために、アクセント習得過程の実態を縱斷的に考察したものである。
第1章...
本論文は、韓国人日本語学習者(ソウル方言話者と慶尙道方言話者)の日本語アクセントの学習効果を調べるために、アクセント習得過程の実態を縱斷的に考察したものである。
第1章では、本探讨の背景と目的、最近のアクセント探讨の動向と成果について述べた。
第2章では、ソウル方言話者の日本語発話のアクセントについて略论したが、ソウル方言話者の頭高型アクセントは単語レベルに比べて文章レベルの学習効果が小さかった。また、2モーラ語に比べて3モーラ語の学習効果が小さく、モーラ数が多いほど習得の時間が長くなることが確認できた。
尾高型と平板型の場合は他のアクセント類型と比べ学習効果が見られなかった。尾高型3モーラ語の文章レベルの場合は2次実験と3次実験ではピッチが改善されたが、2モーラ語と比べては学習効果が小さく、単語レベルと比べても学習効果が比較的小さかった。
平板型の場合も2回の学習で習得するのは無理であろうが、話者によってはアクセント学習効果が現れており、アクセント教育を實施するにしたがって矯正が可能であることを示唆する結果で意義があると言える。
第3章では、慶尙道方言話者の日本語アクセント発話について略论した。アクセント学習前は大抵の慶尙道方言話者の発話に頭高型の傾向が見られた。1次学習の後にも頭高型の傾向は残っていたが、これは慶尙道方言の影響が出たためで、慶尙道方言話者は後半部のモーラを上がり調で発話するのが難しいということが確認された。
慶尙道方言話者の発話で注目すべき点は、中高型の場合、アクセント学習の前にもかかわらず40%前後の正答率を見せていた点である。これは慶尙道方言にも中高型の単語があるため、学習前は中高型の発話に問題がなかったと言える。反面、学習後はピッチに気を使って過剩訂正による間違いが現れていた。しかし、尾高型と平板型に比べては学習効果が現れやすいことが確認できた。
また、慶尙道方言話者の尾高型アクセントの習得は2次の学習だけでは充分ではなく、もう少し長い期間を必要とすることが示唆された。平板型の場合にも学習過程後、たいていの話者の発話でアクセント習得が確認できなかったが、尾高型と同じく平板型の習得にもより長い期間を必要とするようである。
また、1次と2次にかけて学習した後にも発話が安定的ではない場合が多いのは、日本語アクセントに対する認識ができた後、日本語発話に自信を失ったことが原因であると考えられ、ピッチの変化を自然に駆使することが出来ないために起こると推察された。このような現象は学習過程における混乱の時期に度々見られるものである。
第4章では、韓国人学習者の日本語発話のアクセントに対する日本語母語話者の聴取評価を略论した。
ソウル方言話者の場合は日本語の四つのアクセント型全てにおいて3次実験では学習効果があると認められた。慶尙道方言話者は頭高型の場合、3次実験で正しい発話であると評価された。しかし、中高型と尾高型と平板型の場合はソウル方言話者と比べ低い点数を受けたが、3次実験では80%位の発話が正しいと判断された。学習効果に比べて日本語母語話者の評価が高く表れたのは、ネイティブスピーカーであるため日本語アクセントの認定範囲が広いからであると考えられた。
第5章では、韓国人学習者の日本語発話のアクセントの特徴および学習効果を地域別、モーラ数別、発話単位別、アクセント類型別に確認した。
一つ目に、地域別学習者の特徴は、ソウル方言話者の場合、アクセント学習前は大抵頭高型で発話する傾向があり、ソウル方言の影響で後半部のモーラを上がり調で発話する傾向が見られた。慶尙道方言話者の場合もソウル方言話者と同じくアクセント学習の前は大抵頭高型で発話する傾向が強かった。また、慶尙道方言のパタンが固定されており、アクセント学習が反復されても頭高型の傾向はなかなか消えないことが観察された。つまり、慶尙道方言話者の場合、2回だけの学習では満足できる成果が得にくいことが示唆された。
二つ目に、モーラ数別発話の特徴はソウル方言話者と慶尙道方言話者ともに、日本語の四つのアクセント類型において2モーラ語に比べ3モーラ語の学習効果が良くない傾向が見られ、モーラ数が多いほどアクセントの習得が困難になることが示された。
三つ目に、発話単位別の特徴はソウル方言話者と慶尙道方言話者ともに、大抵の場合、文章単位に比べ単語単位の方が学習効果が大きく現れた。しかし、ソウル方言話者の場合は単語によっては単語レベルより文章レベルの学習効果の方がいい場合も見られた。これは韓国人日本語学習者の場合、文章を丸暗記するのが文章の流れを全体的に真似しやすいためで、アクセントの習得にも文章の丸暗記は効果的な措施であると考えられた。
四つ目に、アクセント類型別の特徴については、ソウル方言話者と慶尙道方言話者ともに頭高型の場合は学習効果が高く現れた。中高型の場合はソウル方言話者の3次実験ではピッチが改善されて学習効果が確認できたが、慶尙道方言話者の場合は満足できる成果は見られなかった。
尾高型の場合はソウル方言話者と慶尙道方言話者ともに学習効果が良くなかったが、特に尾高型3モーラ語の習得に難しさを感じていることが観察された。平板型アクセントはソウル方言話者の場合、2回の学習後には学習効果が確認できたが、慶尙道方言話者の場合は2回の学習だけでは学習効果があまり出ていなかった。これらの結果より、尾高型と平板型のアクセント習得には特に時間をかけて練習する必要があることがわかった。
第6章では、2章から5章までの考察を元に、実験略论の結果を整理して問題点を提示した。ここでは問題点を中心に述べることにする。
ソウル方言話者と慶尙道方言話者ともに、2次実験(1次学習後)のピッチが安定していないことが多かった。これは1次学習過程において、被験者がアクセントの形態を耳と口で練習するより理論的に暗記ししょうとしたためであると考えられるが、2次実験の際は実験対象語を1次とは異なった配列で提示したため、発話が困難だったようである。日本語のアクセントは理論的に暗記するより日本語母語話者のモデル音を聞いて口で発話しながら覚えた方が学習効果を増大するのに役に立つと考えられる。
本探讨の実験を通じて、ソウル方言話者は日本語アクセントを思ったより楽に習得することが分かった。アクセントに対して何の先入観にも捕らわれていないソウル方言話者は、日本語アクセントの知識に触れてから学習過程が進むに従って日本語母語話者の発話を真似できるようになり、日本語アクセントを理解するようになった。しかし、慶尙道方言話者の場合は母方言の色が濃いため日本語アクセントパタンを練習して日本語母語話者のモデル音を聞かせても真似することは難しいことが分った。
アクセントの習得には個人の能力差もあり、課題を遂行するのに誠実さの差異もあるが、それよりは母方言である慶尙道方言の干渉による結果の可能性が高いことが推察された。
韓国人学習者が日本語アクセントを習得するのは難しいと言われるが、日本語のように高低アクセントによるピッチパタンが決まっている言語の場合、音声教育の効果が現れやすいと考えられる。韓国人日本語学習者が日本語母語話者に近い発話をするためには音声教育の機会を増やすことと、ピッチ探讨に対してより多くの資料と多数の被験者を対象とした実験で、以前より進歩した探讨をすべきである。
本探讨を通じて日本語の教育現場で学習者のアクセント習得に役に立つ指導がされることが期待される。
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