本稿の目的は、子音が連続する際に起こる音韻現象を「統率音韻論」の理論にもとづいて略论することである。特に、開音節言語とされる日本語において子音の連続が顕著に...
本稿の目的は、子音が連続する際に起こる音韻現象を「統率音韻論」の理論にもとづいて略论することである。特に、開音節言語とされる日本語において子音の連続が顕著にみられる漢字語(複数の漢字で構成される漢字熟語)に注目し、漢字と漢字の結合部分に子音が表れる場合に起こる音韻現象が韓国語と日本語でそれぞれどのような様相を見せるかを略论した。統率音韻論を基盤とした略论により、音韻現象の単なる記述にとどまらず、音韻変化が引き起こされる原理を明らかにすると同時に、日本語と韓国語が同じ環境下で異なる音韻現象を見せる理由を解明することを試みた。
2章では、統率音韻論の基本理論を紹介した。すべての言語の音節はオンセットと、核を有するライムから構成されており、日本語と韓国語の漢字語は枝分かれしないオンセットと核から成る同一構造をもっている。これら構成素間の統率関係によって音の分布が決定する。本研究で主要な論点になるのが、核を挟んだオンセット間における統率関係である。右に位置するオンセットが左のオンセットを統率する場合、間に位置する核は母音として発音されない。漢字語における子音の連続は統率関係にあるオンセット間で核が音声を持たないことにより可能になると説明できる。
3章では、中国語の漢字音が韓国語と日本語でそれぞれどのように対応しているかを整理し、これをもとに両言語の漢字語に現れる子音の連続パターンをまとめた。このとき問題になるのが、領域末に空の核を持つことができる中国語の漢字音が、空の核を持つことのない日本語に受け入れられる課程でどのように変化したかということだ。本稿では、もともと空だった核が日本語では無標の母音(元素を‘v’で表した)で埋められていると想定し、これをもとに漢字語の子音に起こる音韻現象が韓国語と日本語で異なる理由について論理を展開した。
漢字語で子音が連続するときに起こる音韻現象のひとつに、無声阻害音が緊張音になる現象がある。韓国語の硬音化と日本語の促音化にみられる現象については4章で扱った。無声阻害音が連続する場合に後の子音が緊張音になる原理としては、オンセット間の統率関係を成立させるため統率する側の元素Hにヘッドの資格を与えることで説明できる。だたし、韓国語では無声阻害音が連続するすべての状況において硬音化が起こるのに対し、日本語では軟口蓋破裂音[k]に無声阻害音が後続する場合促音化は起こらない。本稿ではこの現象を解説するにあたり二つの可能性を提示した。ひとつは促音化のもうひとつの特徴である調音位置の同化が起こらないことによるとする論議であり、もうひとつはオンセット間で統率関係が成立しないことによるとするものである。前者は、調音位置を表す元素間に強度の差が存在するため元素の入れ替りに制約が生じ同化が起こらないと仮定したものだが、日本語の鼻音に起こる同化現象を見るとき、元素の強度の差は同化現象に関与しないとの結論に達した。後者は、軟口蓋音ともともと空だった核が隣り合わせになることにより軟口蓋音の脱落が起きる例を根拠に、元の漢字音の形態を保存する目的で、[k]では意図的にオンセット間の統率関係を成立させないとの推論だ。この研究では[k]の後で促音化が起こらない理由について後者のほうに妥当性があると結論づけた。
5章では、その他の子音について扱った。韓国語の漢字語で連続する子音に鼻音や流音が含まれる場合、有声音化や鼻音化、舌側音化などが起こる。これらの音韻現象は、漢字と漢字の結合部分に位置する空の核を承認された状態に保つため、前後に位置するオンセット間の統率関係を成立させる目的で、オンセットの内部構造からHやLといった元素を切り放したり付け加えたりしたうえで、元素Lが拡散することなどにより起こる音韻変化だ。これに対し日本語では、もともと空だった核を間に挟んだオンセットの環境が韓国語と同じでも韓国語のような音韻変化は起きず、核は母音として発音される。これもやはり日本語の核には無標の母音が存在していることの根拠となる。つまり、オンセット間で統率関係が成立しない場合、空の核を維持する必要がないため元素の切断や追加を必要とする音韻変化は起こらないと見ることができる。
結論として、漢字語に現れる子音の連続に関しこの論文で新たに提示した論点を次のようにまとめることができる。1.子音の連続つまりオンセットの間に存在する空の核は、韓国語では空のまま保持されなければならないが、日本語では無標の母音で埋まっている。これゆえに韓国語では漢字の結合部分に位置する子音に音韻変化が起こることがあるが、日本語では子音の間で母音が発音される。2.日本語で無標の母音を表す元素は軟口蓋音の調音位置を表す元素と同じである。これゆえに[k]と後続の無声子音では促音化が起こらないことがある。3.韓国語ではオンセット間での統率関係を成立させるため、分節音の内部構造において元素をヘッドに昇進させたり新しい元素を追加することがあり、逆に元素を解釋しなかったり切断したりすることもある。日本語は元素を追加したり切断することはない。それぞれの強化・弱化過程には、統率力における強さの差が関係している。
この研究では、連続する子音で生じる音韻現象の原理に焦点を絞り、漢字語という同じ環境で日本語と韓国語が異なって見せる様相を比較することにより、オンセット間の統率関係と空の核についての概念をいっそう明らかにすることを試みた。しかし、解決を要する課題も残されている。例えば、韓国語の複合語に表れる連続する子音で、漢字語とは異なる音韻現象が見られる場合もある。またそれを日本語複合語の形態素の接続部分で起こる音韻現象と比較する見解もある。これらの現象が異なって表れる理由については、今後の課題としてさらなる研究が必要である。
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