2002年度の韓日ワールドカップ共同開催や昨今の韓流熱風の影響で、最近韓国では日本語表記の飲食店の看板が目立って増えている。これは日本人観光客誘致のための...
2002年度の韓日ワールドカップ共同開催や昨今の韓流熱風の影響で、最近韓国では日本語表記の飲食店の看板が目立って増えている。これは日本人観光客誘致のための手段として、韓国を訪問する日本人観光客への配慮の一つだとも言えよう。しかし、それら多くの看板の中には誤った日本語表記のまま、堂々と掲げられているものも数多い。また、ホテルや飲食店、あるいはデパートや大型量販店のフードコーナー等のメニュー表示にも、誤った日本語表記が目に付く。折角の日本語の看板やメニュー表示が、誤った表記では確かな情報を得ることができず、むしろ笑いや批判の対象になってしまう嫌いがある。一方、日本語を知らない韓国人にとっても、誤用のまま外来語として受け入れられてしまう可能性もある。
従って、このような表記の誤用がどのくらいの範囲に亘っているのか、また、どのような類型の誤用があるのか等の実態調査を行なう必要がある。そこで、本研究では実態調査によって抽出された誤用例を形態別に分類・略论し、誤用に繋がる要因を究明することを目的とした。
実態調査は韓国の二大都市であるソウルと釜山地域を対象とした。まず一次資料としては、現物の看板やメニュー表示を対象とした。そのための実地調査は、日本人観光客が多いソウルの明洞、釜山の海雲臺を中心に行った。また、二次資料として電話帳の職業欄から誤用例を抽出した。この際、紙面上で業種等が明確でない場合は、電話による設問調査も同時に遂行した。
誤用略论に当たっては、形式的面と、意味的面からの考察を行った。形式的な面からの考察は、表現手段として使用される文字を中心に行ない、その誤用形態を体系的に整理し、誤用の傾向を探ってみた。一方、意味的面での考察は、主にメニュー表示を対象に行ない、実生活で使用されている実質的な意味として表記されているかどうかを調査した。
更に実態調査の一環として、日本人観光客を対象に日本語表記の看板やメニュー表示に関する設問調査を行ない、韓国における外来語としての日本語表記の問題点を探ってみた。
以上の点を踏まえた本稿の結論を整理すると、以下の通りである。
一、韓国語の日本語表記は形式的な側面と意味的な側面での考察を行なった。この中で形式的な側面での表記誤用がもっとも著しく現れた。
以下は形式的な側面での表記誤用を整理したものである。
ⅰ、「ツ/ッ」、「ヤ/ャ」、「エ/ェ」などの一般字体と拗音字体を区別することができず、一音節で表すべきところを二音節で表記している。
ⅱ、「サ/セ」、「コ/ユ」、「ブ/グ」、「ソ/ン」など、類似した仮名の区分ができないことが起因した誤用が見られた。
ⅲ、「ハ/バ/パ」のような清音、濁音、半濁音で表記すべき点の区別がなされていなかった。特に、誤用の中で「チ」と「ハ」の誤用が著しく出現したことをみると、「チ」と「ハ」部分での清音・濁音・半濁音の区分が難しいものと思われる。
ⅳ、ブデ(部隊)のように漢字の韓国語読みと韓国語を混用して表記した‘ブデチゲ’の場合、その語源が分からなければどんな料理か理解できない。そのような場合は‘ブタイチゲ’のように日本語の漢字音と韓国語を交ぜて表記すると理解しやすくなると思われる。
ⅴ、‘タッカルビ’という単語の中で、‘닭’の‘ㄺ’のような一音節末にくる子音をすべて「ッ」で統一して表記する傾向が著しく現れた。
ⅵ、促音が不必要に挿入される現象が見られる。特に、破裂音及び破擦音の間で促音が不必要に使用されていることが確認できた。これは破裂音及び破擦音の後にくる文字を正確に発音しようとする努力がもたらした現象と思われる。
ⅶ、「ソーセジ」のように長音の符号である「ー」の弁別力不足で、長音符号をどの位置に表記すべきか不明であることが起因であると思われる誤用が見られた。
ⅷ、韓国語に比べて日本語は母音が不足なため、韓国語の子音/母音音節を日本語で表記する場合、子音と母音の複雑な結合が生じる。そのため、‘된’を‘テン’で, ‘장’を‘ザン’で表記する等、また、‘ィ, ゥ, ェ, ォ, ャ, ュ, ョ’等の半母音音節が適用できない誤 りが発生している。
ⅸ、単母音音節‘아·이·우(으)·에(애)·오(어)·외’をそれぞれ‘ア․イ․ウ․エ․オ․ウェ’と表記するという規則を認知することができず、‘어’を‘ア’で表記する誤りが見られた。
ⅹ、片仮名と平仮名との混用表記が見られた。韓国語の日本語表記は、平仮名と片仮名どちらでも可能であるが、両者の混用は明確に区分できていないことに起因している。
ⅺ、‘シーフードチーズスパゲチィ’のように日本語の外来語表記法が不明なために発生した誤りである。
意味的な側面では、牛肉の部位別名称の表記を牛肉のあばら肉(차돌박이)や霜降りロース(꽃등심)のように、表記する傾向が見られた。一方 、‘チヂミ’、‘ジョン’、‘お好み焼き’のように同一の飲食物を、様々な意味で表現した例も見られた。
二、日本語の韓国語表記は大きく破裂音を硬音で表記する傾向と、摩擦音を破擦音で表記する傾向が著しく現われた。
以上の結論から見る限り、看板やメニュー表示において韓国語を日本語で表記する際には発音のとおりに表記する現象から脱して、現行表記法に合わせて統一する努力が必要である。
一方、日本語の韓国語表記の際は、日本語をそのまま韓国語に訳すのではなく、韓国語に順化した表記で表示すれば、理解しやすく無分別な外来語の使用も阻むことが可能であろう。
最後に、現行外来語表記法と韓国語の仮名文字表記法は、その改訂において活発な論議が交わされているにも関わらず、本稿ではその論議には触れないまま、現行表記法を土台とした考察を進めた点が惜しまれる。以上の点を踏まえ、現行外来語表記法及び韓国語の仮名文字表記法の問題点と解決方案を提示すると共に、実態調査の地域を拡大して、より客観的なデータを新たに作成することを今後の課題として挙げておきたい。
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